液晶性有機半導体の電荷輸送特性を過渡光電流測定法(Time-Of-Flight法:TOF法)を用いて評価しています。液晶相においては、流動性を有するために正孔および電子がホッピング伝導する電子性伝導と電荷をもった分子自身が異動するイオン伝導の2つの伝導が存在します。TOF法を用いることで、それぞれの伝導を同時に観測することができます。
さらには、通常では困難な多結晶状態の電荷輸送も液晶性有機半導体では可能です。これは、液晶相において分子を配向制御でき、分子形状の異方性により結晶成長速度が異なるために、電界印加方向には結晶粒界の影響を小さくすることができるためです。棒状液晶であるターチオフェン液晶においては、TOF法で見積もられた移動度と薄膜トランジスタを作製し、その伝達特性から求まる移動度は一致しており、結晶粒界の影響のあまり受けずに電荷輸送できていることがわかりました。
H. Iino et al. Jpn. J. Appl. Phys. (2006).