液晶性有機半導体


液晶性有機半導体材料の 電荷輸送理論

有機分子からなるアモルファス、あるいは、多結晶薄膜などの凝集体における伝導は、一般に、個々の分子が電荷の移動サイトとなり、分子から分子 へ電荷が移動するホッピング伝導で、分子を構成する芳香環を含むπ‐電子共役系に関わる分子軌道が伝導を担っています。一般に、有機物においては、条件が 整わない限り、無機半導体で見られるバンド伝導は起こりません。したがって、電荷移動の素過程は隣接する分子間の電荷移動と考えることができます.

液晶性有機半導体は分子が規則正しく並んでいるため、π電子共役コアを介したホッピングによる電荷輸送パスが形成され、高速の電荷輸送を実現することがで きます。



 さらにアモルファス有機半導体とは異なり、キャリア移動度μ(電荷速度の電界強度に対する比例定数, v=μE)が温度・電界依存性のほとんどない良好な特性を示す特徴があります(上図)。

液晶性有機半導体中の良好な電気特性はどのような物理に則って記述するのが良いのでしょうか?この疑問はより良い電気特性を実現するための指針を得ること と同義です。



分子の熱振動励起によって分子間を飛び移る電子移動はMarcus 式で表されることがわかっています。さらに分子中の電子はGauss分布に従うランダムな準位に滞在しています(上図:液晶材料はランダムな準位の分布幅 が小さく,これが良好な電荷輸送に結びついています)。我々はこのような条件でMonte Carlo Simulation を実行し、これに基づきSimulationに合致する電子輸送式の構築に成功しています。


下図:我々の構築した電荷輸送式を用いて,実験データを理論フィッティングした例。
広い温度領域で,良い一致が見られる。