画像入力・再現

従来のカラー画像システムでは，画像入出力機器の特性や照明の状態等を正しく補正できていないため，対象物体の正確な色をディスプレイ上に再現することができなかった。しかし，遠隔医療や電子美術館等では，物体の色を忠実に再現することが必要とされる。 そこで本研究室では，分光情報を利用して正確な色再現性を有するカラー画像再現システム（図３）の開発を行っている。このシステムでは，マルチスペクトルカメラを用いて被写体を撮影してマルチスペクトル画像を入力するとともに，撮影時の照明光やカメラの分光感度特性等を利用して観察者のニーズに合わせた表示を行う。具体的には，�@撮影された画像の色をそのまま表示する。�A被写体を観察者の目の前に置いたときに見える色を再現する。�Aを行うためには，画像入力側と観察側の照明環境の違いを考慮して，被写体を観察環境に置いたときに見える色を計算によって求めて，ディスプレイに表示する。本研究室では，図3に示す考え方に基づき，民間企業等と協力して，カラー画像の入力，伝送，保存，分析，表示に関する各種の要素技術について研究開発を行っている。
 

２. 多原色によるカラー画像表示システム

現在，カラー画像の表示媒体として用いられているCRTや液晶ディスプレイ等では，ＲＧＢの３原色で色を表現しているが，再現できる色の範囲（色域）がＲＧＢ３原色で作られる色三角形内部に制限されている。このため，特に彩度の高い色を正しく表示できない場合があり，正確な色再現を行えない。本研究では，ＲＧＢの３原色だけでなく，より多数の原色（多原色）を用いてカラー表示を行うことで，色域を飛躍的に拡大したカラーディスプレイを実現することを目的として研究を進めている。図４は，通常の液晶プロジェクタを２台利用し，特殊なフィルタを装着して６原色表示を行った場合の色域を示している。図４に示すように，原色の数を増やすことで，従来のＣＲＴディスプレイ等と比べて，再現できる色の範囲を飛躍的に拡大することができる。このような画像表示システムの開発には，情報処理技術と，光の屈折，干渉，回折，偏光等の様々な性質を組み合わせて活用することが必要である。
 

３. ホログラフィ

最近，パーソナルコンピュータ等により比較的簡単に３次元の画像を取り扱うことが可能になっており，工業デザインや医療等の多くの分野で利用されつつある。その出力として，３次元画像情報を立体像として出力する技術の実現が望まれている。ホログラフィは，光を波として記録･再生できる技術で，３次元画像の高画質に立体表示する目的に適していることから，本研究室では，３次元画像を立体像としてハードコピー出力する「 ホログラフィック・３−Ｄプリンタ（Holoprinter） 」の実現を目的として研究を行っている。これまでに，コンピュータで作成した画像から自動的に立体像を記録する方法を開発し，観察位置を水平・垂直に移動するとあたかも実物を観察しているように像を再生することが可能になっている（図５）。今後，カラー化，画質の向上，高速化等の課題を解決してゆく予定である。

研究業績(1997年度〜1998年度）

Yuri OHYA, Takashi OBI, Masahiro YAMAGUCHI, Nagaaki OHYAMA, and Yasuhiro KOMIYA : Natural color reproduction of human skin for telemedicine ; Medical Imaging 1998 Proc. of SPIE, [3335], 263〜270(1998)

Masahiro YAMAGUCHI, Takeyuki AJITO, and Nagaaki OHYAMA : Multiprimary color display using holographic optical element ; Practical Holography XII Proc. of SPIE, [3293], 70〜77(1998)

大崎高伸、伴秀行、松尾仁司、岡部昭文、中島光太郎、山口雅浩、大山永昭　：　リアルタイム方式とメール方式を備えた遠隔画像診断支援システム　；　MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY，◯16，［6］，615〜621(1998)

大矢百合、小尾高史、山口雅浩、大山永昭、小宮康宏 ： 正確な色再現が可能な遠隔医療用テレビシステムー撮影条件の取得方法― ； MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY, ◯16, [4], 411〜412(1998)

Masahiro Yamaguchi, Takeyuki Ajito and Nagaaki Ohyama : Image Processing Technique for the Reproduction of Deep 3-D Images By Holoprinter ; JOURNAL OF IMAGING SCIENCE AND TECHNOLOGY, ◯42, [5], 440〜444(1998)

大矢百合、小尾高史、山口雅浩、大山永昭、小宮康宏 ： 正確な色再現手法と遠隔医療への応用 ； 映像情報メディア学会技術報告，◯22，[26]，31〜36(1998)

山口雅浩　：　遠隔医療と画像品質−特にカラー画像の色再現について−　；　映像情報メディア学会誌，◯52，[9]，1249〜1251(1998)

小宮康宏、和田徹、大澤堅健郎、石井健介、大山永昭、内川惠二、山口雅浩、小尾高史、栗木一郎 : 正確な色再現が可能な遠隔医療ＴＶシステム用ソフトウェアの研究開発 ; 創造的ソフトウェア育成事業及びエレクトロニック・コマース推進事業に係る最終成果発表会，229〜232(1998)

土田勝、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： 多視点画像における観察条件の変換 ； 第５回ＨＯＤＩＣ講演会講演論文集, 17〜20 (1998)

味戸剛幸、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： 回折格子を用いた多数の原色によるカラー表示法―光学系の設計と色域の評価― ； 第４５回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, 949(1998)

小宮康宏、和田徹、大澤健郎、石井謙介、山口雅浩、大山永昭、内川惠二 ：マルチスペクトルカメラを用いた正確な色再現システムの開発 ； 第４５回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, 950(1998)

大矢百合、小尾高史、山口雅浩、内川惠二、大山永昭、小宮康宏 ： 正確な色再現性を有する遠隔表示システムの開発（５）―肌の色再現におけるバンド数の検討― ； 第４５回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, 950(1998)

大矢百合、小尾高史、山口雅浩、大山永昭、小宮康宏 ： カラー画像の色再現システムにおける照明光変化の補正手法 ； 第４５回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, 950(1998)

土田勝、味戸剛幸、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： 物体の忠実な再現を目的とした観察条件の変換手法 ； Optics Japan'98講演予稿集, 149〜150(1998)

鈴木裕之、マリア・マジャロワ、角田貢、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： 画像処理装置を用いた３次元Cellular Automataに基づくBlock暗号 ； Optics Japan'98講演予稿, 333〜334(1998)

Jose Javier BAEZ-ROJAS, Takashi OBI, Masahiro YAMAGUCHI and Nagaaki OHYAMA ： Optical interpolation of volume data using pseudo color and an electro-optical-hybrid-system ； OPTICAL REVIEW, 4, [4], 471~475 (1997)

Masahiro YAMAGUCHI, Takayuki Ajito and Nagaaki OHYAMA ： Image processing technique for the reproduction of deep 3-D images ； Proc. of IS&T Annual Conference , 624 (1997)

Masahiro YAMAGUCHI, Ryo IWAMA, Yuri OHYA, Takashi OBI, Nagaaki OHYAMA, Yasuhiro KOMIYA and Toshiaki WADA ：Natural color reproduction in the television system for telemedicine ； Image Display, proc. of SPIE, [3031], 482~489(1997)

山口雅浩、大山永昭 : デジタル画像の色再現性 ; MICROOPTICS NEWS, 15, [2], 51〜56 (1997)

大矢百合、岩間涼、小尾高史、山口雅浩、大山永昭、小宮康宏 : 正確な色再現が可能な遠隔医療用テレビシステムー肌の色の正確な再現― ; Med.Imag.Tech., 15, [4], 443〜444 (1997)

大矢百合、小尾高史、山口雅浩、大山永明、小宮康宏　:　遠隔画像表示システムにおける正確な色再現手法　;　カラーフォーラムJAPAN講演論文集, 49〜52 (1997)

味戸剛幸、小尾高史、山口雅浩、大山永明　:　回折光子を用いた多色ディスプレイの開発−カラー画像データ変換手法−　;　HODIC講演会講演論文集, 38〜41 (1997)

岩間涼、大矢百合、小尾高史、山口雅浩、大山永昭、小宮康宏 ：　正確な色再現性を有する遠隔表示システムの開発（３）−肌の色の再現―　； 第４4回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、909(1997)

味戸剛幸、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： 多数の原色によるカラー表示法―液晶プロジェクターへの適用― ； 第４4回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、910(1997)

土田勝、味戸剛幸、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： ホログラフィック・３D・プリンタにおける並列露光システムの開発 ； 第４4回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、913(1997)

味戸剛幸、小尾高史、山口雅浩、大山永昭 ： 多数の原色によるカラー表示法―カラー画像データ変換方式― ； 第５8回応用物理学会学術講演会講演予稿集、961(1997)

大矢百合、小尾高史、山口雅浩、大山永昭、小宮康宏 ： 正確な色再現性を有する遠隔表示システムの開発（４）−撮像系の特性の推定― ； 第５8回応用物理学会学術講演会講演予稿集、961(1997)

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