1. 保健･医療データ解析手法の開発

現在，保健・医療等，様々な分野で情報システムの普及が進み，画像や波形・検査データ等のデジタル情報が大量に蓄積されつつある。このような大量のデータを解析することによって，今まで定性的に得られていた知識を定量化したり，新たな知識を取り出すこと等が期待される。しかし，現在の所，このような大量のデータを特別な事前知識なしに解析するためツールが不足している。そこで本研究では，大量の医療データを整理・体系化するためのデータ解析手法を開発することを目的として，階層的クラスタリング手法，画像の領域分割（セグメンテーション），分類，時系列データ解析等の技術に関する研究を行っている。図２は，大腸の組織標本の顕微鏡画像に対してセグメンテーションを行った結果であり，(a)については悪性度の異なる領域に，(b)については組織の異なる領域に分割されている。このような方法は，画像に含まれる対象物体の特徴を予め知識として持っていなくても，画像内の特徴に応じて領域分割や構造化を行うことができる手法として有用であると考えられる。

医療において，がん等の疾病の治癒率を向上させるには，それをいかに早期の段階で発見するかが重要である。内視鏡診断における疾病の早期発見等診断の質的向上のためには，従来の観察装置として用いられてきた内視鏡を，生体粘膜の形状，色，テクスチャ等の情報を定量値として得る計測装置として用いるための技術を開発する必要がある。得られた定量値と病変部の状態等の関係を解析すること等により，将来的には内視鏡を用いた診断支援システムを実現できる可能性がある。 このような目的の下に，現在，国立がんセンター等と共同で，生体粘膜の分光反射率を測定し，その解析を行っている。そして，計測された分光反射率が正常部と疾病部でどのように異なるか，また，疾病の種類による違いはどのように現れるか，等について調べている。